ハイビーウォール Q&A
Q1 ハイビーウォール(Hyb-Wall)の名前の由来は何ですか?
A1
ハイビーウォール(Hyb-Wall)はHybrid Reinforced
Wallをもとにして名付けた工法名です。
Hybrid(ハイブリッド)とは「組み合わせ」という意味でとらえていただくとありがたいのですが、何を「組み合わせ」ているかというと、
「ジオグリッド」と「改良土」を組み合わせた(−Geogrid and Soil Stabilization−)「補強土壁」 (forced Wall)です。
これはまったく新しい発想の補強土で、補強土のコストダウンを実現しました。
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Q2 工法の権利関係の位置づけを教えて下さい
A2
ハイビーウォールは大日本土木(株)の特許工法です。特許第4446524号として取得しています。
このように、ハイビーウォールは大日本土木(株)の特許工法ですが、その採用に当たっては特許料などはいっさい設定いたしません。
ただし、ハイビーウォールを採用していただける場合には、壁面パネルとしてハイビーウォール専用大型パネル「ハイビーパネル」をご指定下さい。「ハイビーパネル」は施工性やデザインに優れることはもちろん、なんといってもコストパフォーマンスに圧倒的優位性があることが特徴です(結果、これが工法全体としてもコストダウン効果を生みだしています)。
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Q3 技術の公的機関の証明や工法認定などは取ってないのですか?
A3
(財)土木研究センターより「土木系材料技術・技術審査証明」(技審証第1207号)を取得しています(平成12年11月8日付)。
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Q4 「土質を問わない」とありますが、どれくらいまでOKなんですか?
A4
- 具体的数値で示せば、ωL(液性限界)<50%の粘性土まで適用可能です。
- 逆に岩塊材料など、粒径の大きな材料は改良土に用いることはできません。裏込め土に用いる場合は20cm程度までの岩塊であれば適用可能です。これは、裏込め土の施工が25cm転圧を基本とするため、材料の粒径はこれ以下としなければならないからです。ただし、ジオグリッドを損傷する懸念がある場合には使用してはなりません。
- 詳しくは「Hyb-Wall(ハイビーウォール)設計・施工マニュアル(案)」pp.25〜27を参照して下さい。
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Q5 改良土の施工といった材料費(固化材,短繊維)や手間のかかる作業があるのに、なぜコストダウンが可能なのですか?
A5
高強度で所定幅を持つ改良土の効果により、壁面パネルには基本的に土圧が作用しません。これにより壁面パネルは簡易な構造で済み、パネル代の大幅な削減につながっています。
また、同様に改良土の効果により補強材の使用量も減り、コストダウンにつながっています。他社類似工法も、昨今のコスト縮減の流れから、薄型化によるパネルのコストダウンを図りましたが、ハイビーパネル(ハイビーウォール専用大型パネル)の圧倒的なコスト優位性が変わるものではありません。
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Q6 短繊維とはどんなものですか?混合するとどんな効果があるのですか?
A6
ハイビーウォールで用いる短繊維とは、ビニロン製の繊維材で、一般にはコンクリート補強用の混和材として用いられるものです(市販品)。
短繊維の種類は太さや長さにより多様に提供されていますが、ハイビーウォールの改良土には、太さ15デニール(約40μ),長さ30mmのものを用います(この長さは特注カット長となります)。
この短繊維は非常に細くしなやかで、土によくからまることが特徴です。長さ30mmは、混合実験より、その効果と施工性(混合のしやすさ,分散性)を考慮して設定しています。
短繊維を混合する効果は、
- 圧縮強度が増加する
- 破壊に対して粘り強く(じん性が高く)なる
- 対浸食性に優れる
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Q7 改良土の混合は均一にできますか?
A7
改良土の混合方法は、スタビライザーでもバックホウでもその他でも問いません。基本的にはバックホウによる混合とします。
ただし、どの方法でも、固化材および短繊維の混合量は設計量に対し、割り増し係数を掛けた量とし、
混合状況の確認は基本的に目視とします。
スタビライザーでは十分な撹拌・混合となると思います。バックホウの場合は、土質にもよりますが4〜6分/1m3程度の混合時間とすれば均一な混合が可能です。
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Q8 改良土の品質管理はどうするのですか?
A8
改良土の品質管理は基本的に、締固め密度管理とします。
事前の室内配合試験から現場管理密度(締固め密度)を設定し、その密度が得られるように現場転圧回数を設定します。管理頻度は各公的機関の仕様に準じます。
また、土,固化材,短繊維の計量も重要となりますが、現場での管理シートを利用して、使用量などを確実にチェックします。
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Q9 壁面パネルとジオグリッドは連結しないのですか?
A9
連結しません。ジオグリッドは改良土中に定着させて安定を保つ構造です。改良土とジオグリッドの摩擦抵抗は室内実験により確認しています。
壁面パネルは補助アンカーにより、改良土と一体化させます。
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Q10 ジオグリッドは「テンサーSR-HB」シリーズでなければならないのですか?
A10
現在のところ、ハイビーウォールの特徴である改良土との摩擦特性について、実験により定量的に評価しているものが「テンサーSR-HB」シリーズです。
この点から、ハイビーウォールの品質保証のために「テンサーSR-HB」を採用していただきたいと考えます。
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Q11 固化材は「タフロックTL-3」でなければならないのですか?
A11
様々な土質で行った改良土の要素試験(強度,耐久性など)は、「タフロックTL-3」を用いて行ってきました。この点から、ハイビーウォールの品質保証のために「タフロックTL-3」 を採用していただきたいと考えます。
ただし、使用する土質との相性などから、他の固化材の使用も否定するわけではなく、その場合も適切な配合試験を実施し、採用に当たって下さい。
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Q12 壁面パネルの役割は何ですか?
A12
ハイビーウォールは、構造的には改良土とジオグリッドにより安定させます。すなわち、壁面パネルは構造的に何ら寄与するものではありません。
壁面パネルの役割は、美観や浸食防止、および施工時の改良土の転圧補助材としての役割を期待します。
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Q13 Hyb-Wallの設計法について教えて下さい
A13
現在、補強土の設計における公的基準としては以下の4つがあります。
- 「ジオテキスタイルを用いた補強土の設計・施工マニュアル 改訂版」,(財)土木研究センター,平成12年2月
- 「補強盛土工法(RRR工法)設計・施工マニュアル」,RRR工法協会,平成10年10月(鉄道総合技術研究所が開発した補強土工法)
- 「補強土(テールアルメ)壁工法 設計・施工マニュアル 第2回改訂版」,(財)土木研究センター,平成11年12月
- 「多数アンカー式補強土壁工法設計・施工マニュアル 第2版」,(財)土木研究センター,平成10年11月
ただし、ハイビーウォールの特徴である改良土を使用し、この効果を設計に取り入れる点については、「ジオテキスタイルを用いた補強土の設計・施工マニュアル改訂版」の設計の原理を応用した設計法を構築しています。
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Q14 改良土により盛土中の排水不良が生じ、安定性を損なうことはありませんか?
A14
ハイビーウォールでは盛土中水平排水として、帯状排水材を壁面パネル1枚(2u)について1本敷設します。帯状排水材は、改良土を貫通して壁面パネル裏に設置する鉛直排水材(不織布など)につなげて排水する構造とします。
これにより盛土中の間隙水圧の上昇を抑えます。(「Hyb-Wall(ハイビーウォール)設計・施工マニュアル(案)」pp.75参照)
地山からの湧水や切り盛り境からの流入水の対処は別途行わなければなりません。
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Q15 改良土はアルカリ性になりますが、アルカリの周辺環境への影響はありませんか?
A15
ハイビーウォールでは、改良土は基本的に密封状態になるので、表面水がアルカリの影響を受け、周辺環境に影響を及ぼすことはありません。あったとしても、まったく希釈されpHが問題となることはありません。
また、土中への浸出水の影響が考えられますが、改良土自体透水係数の小さい場合が多いので、まず、浸透してくる水が非常に少ない。浸出水としてでてきてもカルシウム分が主なので、周りの土壌で吸着され周辺環境へ影響を及ぼすことはありません。
土壌のカルシウム吸着能力は非常に高く、5cmの粘土層があればまったく心配いらないと言われています。
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Q16 建設省より、セメントおよびセメント系固化材を用いた地盤改良や改良土の利用について、六価クロムの溶出問題への通達が平成12年3月24日付で出されましたがHyb-Wallにも適用されますか?
A16
ハイビーウォールにも適用されます。
通達に則った六価クロム溶出試験を実施する必要があります。改良土の施工量により溶出試験検体数は変わりますが、概ね1,000m3に1検体程度と考えればよく、配合試験の段階(発注者が実施)と施工中(施工者が実施)に行います。配合試験の段階で溶出基準値を満足しなければ、固化材の変更あるいは工法変更を考えなければなりません。
ただし、この問題は、特定の土質で比較的少量の固化材の添加量(固まり具合が弱い)の場合に発生する可能性が否定できないといった観点から出されたものであり、ほとんどの場合の問題となりません。しかし、溶出試験は実施する必要があります。
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Q17 改良土の部分と裏込め土の部分に不同沈下を生じませんか?
A17
ハイビーウォールが適用される盛土高さの範囲では、改良土と裏込め土の境に、不同沈下による道路舗装の機能障害などを生じる可能性は低いと考えます。
不同沈下はゼロではないはずですが、改良土と裏込め土はほぼ同時に施工されていく点,裏込め土も必然的に水平薄層転圧される点などから、よほど圧縮性の大きな土を使用しなければ問題とならないと考えます。
ただし、ハイビーウォールでは現地発生土の粘性土(ωL<50%)も適用可能ですので、この場合には裏込め土の圧縮性が問題となる場合も考えられます。この場合には、舗装工事前になるべく放置期間をとったり、余盛りを行うなどの対処が必要と思われます。
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Q18 Hyb-Wallの適用範囲を教えて下さい
A18
ハイビーウォールの適用範囲を以下にまとめます。
- 主に道路工事に適用する
- 適用高さは15m以下程度
- 盛土材料は礫質土から粘性土(液性限界ωL<50%)まで適用可
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Q19 改良土の転圧は型枠を用いて直に仕上げる必要があるのですか?
A19
特に直に仕上げる必要はありません。
下図のように、型枠を用いると改良土の材料ロスがありませんが施工手間がかかります。施工方法としてはこの他に、右の図に示すように、背面の盛土を先行して敷均し、パネルと盛土の間に改良土を投入して転圧する方法もあります。
また、改良土を先行して敷き均してから盛土材を敷き均すこともできます。
どちらも改良土幅を確実に設計幅確保することが重要です。
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Q20 壁面パネルの背面は突起が出ていて、その間は改良土の転圧が難しいと思いますが、どうやって転圧するのですか?
A20
プレートコンパクタを用いて転圧して下さい。
また、この部分は人力に頼ると効果的です。下の写真に示すような「タコ」と呼ばれるもので転圧を行うと案外転圧効果があります。
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Q21 ハイビーウォールの水辺への適用性について教えてください
A21
ハイビーウォールの水辺への適用性は、壁面部分に改良土を用いて固化してしまう点から他の補強土工法に比較して高いものと考えます。ただし、以下の点に留意して下さい。
- 設計は、盛土中にH.W.Lまでの残留水圧を残した状態で行うこと
- 根入れ深さは1m以上とすること(川や池などの水辺の状態を考慮して決める)
- 壁前面と原地盤とが接する部分には、捨石,じゃかご,ふとんかご,またはコンクリートブロックなどによる根固め工を施すこと(洗堀防止)
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Q22 曲線施工は可能ですか?
A22
ハイビーウォールは壁面のパネルを基本的に千鳥積みとしますが、この場合、曲線をきれいに施工するためには R=200程度までが限度となります。R=200以下の曲線に対応するためには以下の方法があります。
@6〜10mの直線を連続的に折っていく
----内カーブの場合は問題なし。
外カーブの場合、R によっては折点のパネル端部の処理(面落とし) が必要となる場合あり
A千鳥積みでなく、いわゆるいも積み(縦方向の目地も合わせる)にする
----内カーブの場合は問題なし。
外カーブの場合、R =25までは問題なし。それ以上のカーブの場合は パネル端部の処理(面落とし)が必要
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Q23 現場条件、特に盛土材の土質が変わった場合の対処方法を教えてください
A23
現場条件が設計条件と異なり、設計断面に影響がでるのは基礎地盤条件(地下水位含む)と盛土材条件です。
このうち、施工中ということから言えば盛土材条件が変わった場合となり、表題のQとなります。
問題となるのは当然盛土材が悪い方へ変わった場合ですが、この場合は速やかに監督員と相談の上、工事を一時中断し、再設計が必要となります。
改良対象土も変わるということであれば配合試験も必要となります。施工の段階にもよりますが、ハイビーウォールの場合は条件によって設計断面を柔軟に変更することができます。ジオグリッドなどの材料も現場で必要な長さにカットしますので無駄はほとんどないと思います。
では、「盛土材の土質が変わった」という判断はどういう基準で考えるか、ここが判断の難しいところです。明らかに素人目にみても例えば、砂質土が粘性土に変わったのであれば上記のとおりの手順をふみますが、砂質土系であっても「細粒分が多くなったみたい」、とか、「含水比が高くなったみたい」といったところの、ころあいの判断が難しいと思います。
この場合はやはり、専門家に判断してもらう必要があると考えます。
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Q24 改良土の混合方法および撹拌性の管理はどのように行ったらよいですか?
A24
改良土の混合方法および撹拌性に関しては定量的な管理値は設定していません。工法規定的な考え方(施工法と混合時間を設定し、これを遵守する)で対処していただきたいと考えます。
改良土の混合方法は基本的にバックホウでいいですが、スタビライザーやバックホウのアタッチメントに撹拌翼をつけたものなど、他の方法でも結構です。改良土の一日の施工量(必要量)やコストを考慮して決めて下さい。
ただし、いずれの方法にしろ、ハイビーウォールの本体施工開始前に改良土の試験混合を実施して、固化材および短繊維の撹拌性について目視により確認を行って下さい。この時、監督員の立ち会いが望ましいと思います。
この試験混合により設定した施工法(混合機械)において、十分な撹拌が認められる混合時間を設定し、実際の工事においてもこの混合時間を守って施工をするようにして下さい。
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Q25 ガードレール構造は?
A25
@パネル直上のガードレール
下図のように、ハイビーウォール本体と分離した独立型の基礎を利用したガードレールとして下さい。
A埋込み型のガードレール
壁面からの距離を1.5m以上として下さい
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Q26 埋設管に対応できますか?
A26
補強土工法による直壁上の道路下に埋設管を設置する予定がある場合、埋設深さによっては補強材がじゃまになるケースが考えられます。
ハイビーウォールでは、下図のように埋設管の深さによっては最上部のジオグリッドの位置を最大50cm下げることができ、これにより埋設管の設置に対応可能となります。
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Q27 審査証明の範囲(最大壁面高さ10m以下)とはどういう意味ですか?
A27
公的機関により技術の安定性を担保する範囲が高さ10mまでという意味です。
ただし、壁面高さが10mを越えるからといって安定性が十分とは言えないなどと言うことではなく、あくまでも公的機関の保証の範囲という位置づけとお考え下さい。もちろん、高さ10mを越えても十分に安定した補強土であることは実績の面からも言うまでもありません。
それでは何故、この審査証明の範囲が設定されたかと言いますと、実績(平成17年11月現在)の最大壁面高さ=10.5mであったことによります。
現在(平成24年4月)では、ハイビーウォールの最大壁高の実績は14.7mとなり、その他の事例でもほとんどが最大壁高10mを越えていて、いずれも安定して供用されています。また、耐震性についても大学との共同研究で、遠心模型による振動実験を実施しており、ハイビーウォールはレベル2地震動に対しても、変形が小さく、安定性の高い補強土壁であることが確認されています。
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Q28 配合試験のやり方を教えてください
A28
ハイビーウォール工法の配合試験は、一般によく実施される基礎地盤改良の浅層混合改良や深層混合改良の場合の配合試験の方法と若干考え方が異なります
一般には、設計必要強度に対して、室内試験と現場施工との安全率を目標強度設定の段階で考慮し、必要強度×2(例えば)の強度を目標強度として配合量を求めます。
これに対しハイビーウォール工法では、設計必要強度=目標強度として設計配合量を配合試験より求めます。この配合量に対し実際の現場では割り増し係数として1.2〜1.5程度(土質により設定)を考慮して固化材の混合量を決めます。
配合試験の詳細については、ハイビーウォール研究会より示されている「土質試験および配合試験の手順」を参考にしてください。
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Q29 品質管理項目とその方法を教えてください
A29
施工中の品質管理項目は以下に示します。
やり方や頻度設定の考え方については、ハイビーウォール研究会より示されている「工法概要・設計概要・施工指針(同解説)」および「施工計画および品質管理計画手順書」を参考にしてください。
混合ヤード | 改良対象土の含水比 | 土の含水比 | 1日1回 および 降雨後, または含水比の変化が認められたとき |
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盛土ヤード | 盛土材の施工含水比 および現場密度 |
土の含水比試験 現場密度試験 |
500m3に1回以上 |
改良土の施工含水比 および現場密度 |
土の含水比試験 現場密度試験 |
1層(仕上がり厚さ25cm) あたり1回 |
|
改良土の強度 | 現場採取試料を締め固めた供試体の 一軸圧縮強度試験 |
施工開始後に1回 |
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